ひろしコンフォーコ

ツィンク奏者が物知り顔であれこれ語ろうとするものの、ちっとも上手くいかないブログ。

森山広という人間。小学時代編。

前回の続き。

 

hiroshimoriyama.hatenablog.com

 

小学1年生の頃、僕は天草四郎に憧れ単身で熊本県天草市に移住した。そこでの暮らしは、貧乏ったれ過ぎて毎日雑草に塩コショウを振って食べるほどだったが、豊かな自然とのどかな空気に包まれ、僕は自分の天才っぷりに磨きをかけていた。

 

僕にはくそったれでどうしようもなく残念な兄貴がいる。歳は3つ上だ。天草に引っ越してきたとき彼は4年生で、ちょうど部活動に入部できる学年だった。彼には、水槽と音楽と何が関係あるんだ? くらいの知識しかなかったが、音楽が好きなら、という母の勧めで吹奏楽部に入部した。
このエピソードで分かるように、兄貴は僕と違って天才ではない。いや、ただの愚民である。

 

ここから、僕は謎の英才教育を受けることになる。
兄貴が吹奏楽部で覚えてきた曲を歌って聴かされ、それを覚えこまされるのだ。そして、僕が歌うそのメロディに合わせて彼が違うパートを歌うという、正直、何が楽しいのかさっぱり分からなかったが、たまには愚民のやることにも付き合ってやらねばならないのが現実。天才であるがゆえの苦しみである。

ちなみに、覚えさせられたのはネリベル作曲のフェスティーボだ。

 

そんなこんなでワケワカラン毎日を過ごしていたのだが、4年生のときに転機が訪れる。

なんとも運の悪いことに、兄貴もお世話になった吹奏楽部の熱血教師が担任になってしまったのである。
というのも、僕はソフトボール部かサッカー部に入るつもりだったのだが、「森山の弟」というだけで目を付けられてしまったのである。実に不運であるが、才能の塊であるがゆえに見逃すことが出来なかったのであろう。

 

 

そして、運命の日。

 

 

熱血教師の鶴の一声で、友達と二人で吹奏楽部に見学に行くことになった。
音楽室に入ると教室いっぱいに先輩たちが楽器を持って座っていて、人数も多かったのでそれだけですごい迫力だったが、僕らの為に演奏してくれるというので、じっと先輩たちを見ていた。

ネリベル作曲『二つの交響的断章』の第二楽章。ティンパニソロの強奏から始まり、金管群がフォルティッシモで鳴り響いた。そして、木管楽器が悲痛な叫びをあげる。
見事に整えられたアンサンブルと歯切れのいい金管楽器の音色と迫力、いや、まさに迫真というべきその演奏に、まるで金縛りにでもあったかのような衝撃を受けた。虜になったというのではない。文字通り、“何か”に憑りつかれたのである。

 

 

その瞬間、僕はトランペットを演奏することを決めた。

 

 

たった4つの音、一小節に並べられた《F-D-B♭-A》という、たったこれだけの音だった。僕の人生を変えたのは。

 

あの時の音は未だ脳裏に焼き付いている。
今でも目を瞑れば、あの4月の終わりの天草の風景や香りが鮮明によみがえる。そして、その時の光景や先生や先輩と交わした言葉もひっそりと聞こえてくる。

ありふれた出来事だけど、僕にとっては何よりも大きなこと。僕の音楽家としての道のりはここから始まったのだから。

それからというもの、寝ても覚めても音楽のことばかり考えるようになった。それこそ、朝起きてから夜寝るまで、ご飯食べる時も授業中も関係なく、僕の意識は音楽に奪われていた。そして、そう時間を空けずして、ウィーンフィルの首席になることを夢見るようになった。

まったく、天才らしいエピソードである。凡人との違いというのは、こういったところでも現れるのだ。

 

ちなみに、この頃、現在僕が専門にしているルネサンス~初期バロックの音楽との出会いを果たしている。それがルネサンスだとか初期バロックだという意識はなかったが。

また、ツィンクとも資料の中で対面しているが、これがツィンクとの初めての出会いである。

 

hiroshimoriyama.hatenablog.com

 

そんなこんなで、不思議な方向に興味を持ちながらも普段は特に意識することなく、いわゆるクラシック音楽やオーケストラ、トランペットで奏でられるあらゆる音楽に憧れを抱きながらこの時代を過ごすことになった。

 

吹奏楽部に勧誘し、勝手に自分の担当する楽器を決めてしまった僕を受け入れ、音楽を教えてくれた熱血教師のことは恩師だと思っている。それくらいに感謝している。それは、間違いなくこの時代に経験したことが、現在の僕の礎になっているからである。

 

 

こうして、ツィンク奏者が生成され始めたのだった。

 

 

最近になって思うことがある。

 

当時考えていたことは正しかったと。

一人の人間として将来結婚し子供を育てるべきだが自分は結婚すべきでない、自分にはそれが出来ない、と悟っていたのだから。
見事に、現在の僕は結婚不適合者で花の散った独身である。

 

 

 

物語は、まだまだ続く…

 

 

うーん、なんかちっと真面目っぽくなっちまったなぁ、、、

不本意である。

 

 

 

※100億割増しで脚色してます(@_@)
F-D-B♭-Aは「ファ・レ・シ♭・ラ」の音のことです。