『植松伸夫の創作の軌跡』で僕が体験したことを語ってみる。~苦悩の時代の憧れの人~
3月5日、 ファイナルファンタジー(FF)の音楽の生みの親、植松伸夫の講演会が開かれた。
この会はノビヨ師匠(植松伸夫)が自らその半生を振り返るというもの。
幼少期~現在に至るまで、作曲家 植松伸夫を形成した様々なエピソードが語られた。
ノビヨ師匠に会える!!!!
と大興奮で期待と夢で胸を膨らませながら会場へ。
そこは感激の嵐が渦巻く世界。
今回は、そんなノビヨ師匠なお話。
序章
当日朝、前日もほとんど眠れていないのにテンションはマックス。
いつも朝はすこぶる調子悪いのに、それが嘘のようにさえ感じられる。
興奮しすぎてアヘアヘなってる僕は、遅刻魔であるにも拘らず、時間より早く会場に着いてしまった。
ドキドキして仕方なかったけれど、アヘアヘしながら外のベンチに座って待つことにした。
辺りを見渡し、この中にもノビヨ師匠に会いに来た人がいるのかなぁ、なんて想像を膨らます。
座っていてもじっとしていられず、そわそわそわそわと体をゆすったり、深呼吸してむせたり。
開場の時間。
ビルに侵入し、受付へ。
ノビヨ師匠の講演会に来たであろう人たちが、ノビヨ師匠どこや、みたいな動きを見せている。
受付に聞いたら、ノビヨ師匠の講演会に来た人はそのまま部屋行ってえぇで、ってことで、その言葉を聞いた「ノビヨ師匠どこや集団」とともに部屋へ。
「もっと前に座りたかったのに・・・!!」
心の中の第一声である。
すでにたくさんの人が会場に入っていてのだ。
それでも真ん中よりは前に座れたし、ノビヨ師匠の顔面もしっかり見えたから良かったんだけど。
講演開始20分前。
周囲もどうやら落ち着かない様子。
友達同士で談笑している者もいれば、胸の高鳴りを抑えるようにじっとノビヨ師匠の登場を待つ者もいる。
僕のことは言わずもがな、、、だけど言っちゃう笑
やっと、ノビヨ師匠に会える。
そう思うだけで息が切れるように呼吸が激しくなった。
ずっと夢見てた瞬間がもう目の前に迫っている。
今までもコンサートで生ノビヨ師匠を見たことはあったけど、間近で見るのは初めてだ。
何度ノビヨ師匠の音楽に励まされ勇気づけられ、涙してきたか。
その一つ一つに思いを馳せる、、、なんて余裕すらないけれど、たくさんの想いが頭の中を駆け巡る。
そして、ついに、、、
ノビヨ師匠降臨!!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
ノビヨ師匠だぁぁああああああああああ!!!!!!
待ちに待ちまくったこの瞬間!!
きっと他の参加者もそうなんでしょう。
ノビヨ師匠が登場するや否や沸き起こる会場いっぱいに響きわたる拍手がそれを物語っている。
僕も叫びだしたい気持ちを何とか抑え、拍手を贈った。
(はぅ!とちょっと声を漏らしてしまったのはここだけの話)
ノビヨ師匠が目の前にいる!!
それだけで、僕の心臓は心肺停止を招きかねないほど興奮に高鳴った。
いつもコンサートやモニター越しで見ているのと何ら変わらないノビヨ師匠。
はぅぅぅ!!!
こうして、夢の時間が始まった。
『植松伸夫の創作の軌跡』
幼稚園時代、オープンリールのテープレコーダーで自分の声が録音できることにショックを受けた話に始まり、小学校時代には登下校の暇を持て余して物語を作って遊んだり、バク宙の練習方法を自分で編み出し習得する話など、なんともおかしな話のオンパレードが続く。
笑顔と笑いの絶えない会場。
ずっと身を乗り出して聴いていた。
激しくヘッドバンギングしながら。
他の参加者も興奮を抑えきれない様子だった。
時折、影響を受けた音楽なども交えながらのお話は、ファンにとっては生唾ものの幸せタイムなのである。
さらに話は続く。
中学生時代~高校生時代~大学生時代と時代ごとに語られていくが、そこには音楽をどう学んだとか、そういう話は一切出てこない。
というのも、ノビヨ師匠は音楽教育を受けたことがない。
音楽大学に行ったこともなければ、いわゆる街の音楽教室にも通ったことがない。
バク宙を自分でマスターしたように、音楽も自分のやり方で自分で覚えてしまった。
僕はそういうノビヨ師匠に、どこかシンパシーみたいなものを感じているのかもしれない。
僕自身、2年前に今の師匠と出会うまでは人から音楽を習ったことなんてほとんどなかった。
そんな僕にとって、今回のノビヨ師匠の話はとても勇気づけられるものだった。
いちいちノビヨ師匠の言葉に頷き、興奮し、感動していた。
中でも一番心に残っているのは、「植松伸夫・冬の時代」の話。
植松伸夫・冬の時代
大学を卒業した後、バイトしながら作曲を続けていたノビヨ師匠。
お金はなかったけど何とか食べてはいけた。
でも、こういう状況は自分で変えようと思わない限り、ずっとその生活が続く。
これではいけないと、バイトを辞めて音楽に専念することを決心。
それからCMの仕事をもらうようになり、しばらくして、当時スクエア(ゲーム制作会社)でゲームを作っていた女性に出会いゲーム音楽の世界に入ったという。
もし、その決心がなければ、スクエアに入社することもゲーム音楽を作ることもなかったのかもしれない。
それは分からないことだけど、自分で状況を変えようと思わない限りその生活が続くというのはその通りだと思った。
これから自分がどうなるかなんて分からないし決意が揺らぐこともあるけれど、僕も自分で音楽の道を選んだんだ。
小難しくあれこれ考えたり悩んだりして自分にストップかけないで、やりたい事やり尽くしちゃえばいいじゃないか、と。
まさにいま冬の時代を過ごしている音楽家にとって、強く心に響くエピソードだった。
質問タイム!
その後、「スクエア時代」と「退社後、そしてこれから」のセクションもあったが、時間が迫っていた為、大急ぎで簡単にまとめられた。
そして、質問タイム!!!
粘りに粘ってなんとか最後に当ててもらった!!
というか、無理やり当ててもらった・・・苦笑
興奮を抑えながら質問する、、、
僕「植松さんの音楽ってベースラインや旋律が美しいのはもちろんなんですが、内声が美しいと思うんです。何か影響受けたとか、自分の中から生み出したとか、、」
師匠「PSG音源の3音の時から書いてるから、3つの音で書く癖がついてるんだと思う。ベースがどうとか内声がどうとか3音で全て表現しないといけないからねぇ。今でも3つの音があれば音楽は出来ると思ってる。」
僕「ルネサンスもだいたい3つか4つの音で作られているんですが、、ごにょごにょ」←ごにょごにょ何言ったか忘れた・・・
師匠「ルネサンスとかそういう音楽好きですからねぇ。ああいう(音の)動きとか。もしかしたら、どっかで影響受けてるのかもしれないね。」
声が震える震える!!!
会いたくてじゃない!!!
もう会ってるから!!!
ノビヨ師匠が質問に答えてくれた。
その事実が嬉しくて嬉しくて発奮!!!
あぁぁもう本当やべぇぇぇえええええ!!!
感激ありがとう!!!
まさかのサイン会!
さらにさらに!
なんと、急遽サイン会にノビヨ師匠が応じてくれることに!!
ふふふ・・・こんなこともあろうかと、ノビヨ師匠がもう何年も前に書いた本を持ってきていたのである。
しかし、さすがは熱烈なファンたち。
それぞれお気に入りのFFのサントラやら楽譜を持ってきているではないか。
中にはiPhoneにサインしてもらっている人まで。
興奮のあまりいてもたってもいられず、さっそくサインの行列に並ぶ。
なんと、自分で作曲した曲をCDに焼いて渡している強者がいる!
なんでも、ゲーム音楽の作曲家を目指しているんだとか。
そして、僕の番。
サインしてもらいながらノビヨ師匠にお願いしてみる。
もちろん、手も声も震えている。
僕「ルネサンスの楽器でツィンクっていうのやってるんですけど、いつか曲書いてください!」
師匠「え?なに?つい??」
僕「ツィンクです!」
師匠「何それー!どんなの?」
僕「ありますけど、、」
師匠「見して見して!」
ササッ!ツィンク登場。
師匠「うわ何これー!」
僕「ここにトランペットとかみたいなマウスピース挿して吹くんです」
師匠「あーじゃー今はアレか、聴かせてって言っても吹けないか」
僕「ありますけど、、」
師匠「お、じゃー聴かせて聴かせてー!」
僕「いいんですか!?」
師匠「ちょっとサイン書いてるから準備してて」
僕「はい!」
ツィンク奏者、ツィンクを吹く。
師匠「おおー、またゆっくり聴かせてよー!」
僕「はい!ありがとうございます!めっちゃ緊張しましたー!握手して下さい!」
師匠「はいどうぞどうぞ笑」
ま、まさか、、憧れのノビヨ師匠の前で演奏することになるとは思わず、、、今までにないくらい緊張で((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
それなのに、ノビヨ師匠に吹いてと言われて、迷いもせず「いいんですか!?」なんて言っちゃって、、、
それくらいの度胸は付いたってことなんだろうな、うん。
しかし、死ぬかと思ったw
でも、そんなに悪くない演奏ではあったぞ!多分!ヘブン!
あれだけ震えて息も上がってたのに、演奏って出来るもんなんだな!w
そんなこんなで、あわあわしながら会場を後にした。
憧れの人
ずっとノビヨ師匠の音楽が大好きだった。
子供の頃からずっと。
いつか会いたいって思ってた。
2012年、苦悩の時代。
この頃、僕はその何年も前から悩ませれていた症状が酷くなり、外を出歩くのさえ難しくなっていた。
人と話すのも嫌った。
そんな時、ふと聴いたのが植松伸夫の音楽だった。
美しいメロディとその優しい世界に涙したのを覚えている。
子供の頃に聴いた耳に馴染んだ曲もあれば、それまで知らなかった曲もたくさん聴いた。
それまでは、単にFFの音楽が好きなだけだったんだと思う。
改めて聴いてみると、次第にノビヨ師匠がどんな人なのかもっと知りたくなって、インタビュー動画を観たり本を買ったり古い記事を読んだりした。
どんどん植松伸夫の音楽にのめり込み、ノビヨ師匠が好きになっていった。
この年の暮れ、Distant WorldsっていうFFのオーケストラコンサートが開催された。
大阪公演には、もちろん僕も行った。
生ノビヨ師匠を見るのは二回目だったけど、ものすごく興奮して、客席から「ノビヨぉぉ!!」と叫んでしまった笑
一緒にいた友達には嫌がられたけど、ノビヨ師匠は手を振ってくれた。
苦悩の時代にこれだけの興奮と感動を与えてくれるもの。
あの時、植松伸夫の音楽を聴いてよかった。
どれだけ支えになったか。
どれだけ救われたか。
そんな憧れのノビヨ師匠に会えただけでも感動なのに、質問に答えてもらったり、サインしてもらったり、握手してもらったり、、、
演奏まで聴いてもらえて。
言葉では言い表せないこの気持ち。
どうやったって語り尽くせない。
夢のような出来事。
僕の喜びに震えた心がそれを体験した何よりの証拠。
僕は、一生この事を忘れられないでしょう。
そして、決意を新たに音楽に向かっていきます。
本当、最高だったよ。
ありがとう、ノビヨ師匠。