金管楽器における高音のお話。本当に苦手ですか?
先日、コンクール前ということで地元の中学校の吹奏楽部にお邪魔してきました。
知り合いからトランペットの指導をお願いしたいと声をかけて頂いたので、吹奏楽もトランペットもかなり久しぶりでしたが、何か力になれればと気張ってきました!
予定より早く学校に着いたので合奏練習を聴いていたのですが、そこで感じたのは、最近の中学生ってすごいなぁということ。
大阪の中学校の場合、ほとんどの生徒が中学生になって初めて楽器を始めます。
ピアノやエレクトーンを習っていたり、中にはフルートなど吹奏楽で使う楽器の経験がある生徒もいますが、中学校の吹奏楽部で音楽を始める人が多いです。
3年生でも2年ちょっとしか楽器の経験がないと。
それなのに、みんなすごくいい音してるし難しいことも出来るしで、すごい努力をしているんだなぁと、感心してしまいました。
教えることがない
そんなこんなで、わざわざ僕が教えるようなことはないなぁと感じました。
他にも講師を呼んだりしているようでしたし。
なので、作戦変更して何か困ってることがあればそれについてどうやって解決するか一緒に考える時間にしました。
コンクール数日前に何をそんな悠長な…という反応もあるかと思いますし、僕もその点は悩んだのですが、現時点で演奏には特に問題がない状態でしたので、困っていること=不安を取り除くことで、いま出来ていることがより楽に出来るようになればいいなぁと。
技術の精度を上げることにも繋がりますし。
そうすると、不安に思っていた箇所や技術も多少なり余裕を持って演奏出来ますからね!
質問タイム!
ということで、質問タイムだらけのグループレッスンが始まりました。
どんなことで困っているか、難しいと感じている技術を実践する時にどんなことが起こっていて、何が問題なのか、そもそも問題があるのか。
出来るだけ丁寧に観察・分析するようにしました。
運指や高音へのアプローチ、アンブシュア、演奏時の息苦しさについて質問が出ました。
特に高音へのアプローチ、五線の上のソ(実音F)から上の音に対して苦手意識が強いようだったので実際に吹いてみてもらいました。
パァーン!!
NGテイクなしの一発OKです笑
すごく綺麗で輪郭のある音色です。
でも、本人はすぐに吹くのをやめて、頭をかしげてから吹きなおしました。
そこで、
「いま綺麗に鳴ってたのに何で吹きなおしたの?」
と聞いてみたら
「雑音が混ざったので…」
という返答。
しかし、実際には雑音なんて少しも混ざっていませんでした。
これは、金管楽器を演奏している人は分かってもらえると思いますが、なんとなく雑音が入りそうな感じがしたり、なんとなく音を伸ばしきれない(途中で音が外れちゃいそう)感じがして吹くのを止めたくなるアレです。
本番では、音が外れてしまうのを回避する為に使える技術でもありますが、練習の時はそもそもミスをしても何の問題もないので、怖がらずに吹き続けてみたらいいと思います。
その結果をみて、どういう対処をすればいいのか考えても遅くはないのですから。
さて、質問は「高音が苦手なのでみてほしい」ということでした。
この生徒さんは、高音が苦手で鳴らしにくいと感じているようでしたが、途中で吹くのを止めただけで綺麗に高音を吹けていました。
ということは、すでに高音を演奏する技術はあると考えられます。
でも、本人は高音が苦手だと思っています。
これは非常に勿体ないことです!
高音が綺麗に鳴らせるということは、むしろ高音が得意だという可能性さえあるのではないでしょうか。
そう考えるのが自然だと思います。
上手くいっていることと上手くいっていないことを知る
そういう訳で、僕はこの生徒さんの高音を演奏する技術については、特に問題はないと判断しました。
でも、生徒さんは問題を感じている。
そこで、一つ考えられるのは、音を「長く」伸ばす時に何かが起こっているのではないかということ。
今回なにか問題があったとするならば、ということですが。
しかし、この点も曲の中では問題ありませんでした。
なので、おそらく問題視する必要はないかと思いますが、今後機会があれば観察したいと思います。
曲を演奏している中で、一つだけ気になる点がありました。
それは、運指。
指を動かすのが遅い、またはタイミングが合っていない為に、発音が悪くなったり音を外してしまったりしていました。
なので、ピストンの押し方、押す時に身体はどう動くか解説した後、少しだけ一緒に練習してみました。
その場で改善とはいきませんでしたが、少し動きやすくなったとフィードバックをくれたので、具体的な練習方法をお伝えして試してもらうことにしました。
まとめ
今回のことを簡単にまとめてみようと思います。
この生徒さんは、高音に問題を感じていました。
しかし、決して高い音を演奏する技術がない訳ではありません。
実際に綺麗な音で演奏できているのですから心配する必要さえありません。
立派な技術が身に付いているのだと自信を持ってほしいところです。
上手くいっていなかったのは、運指。
ピストンを押すスピードやタイミングが上手くいっていないと、音が思うように鳴ってくれないということは良くあることです。
こうやって、何が上手くいっていて、何が上手くいっていないのか明確に認識することは、上達する上でとても大切なことです。
大雑把な分析で「高音が苦手」「高音に技術的問題がある」と、安易に結論付けてしまうと、本来持っている演奏能力を活かせないばかりでなく、成長を阻むことににも繋がってしまいます。
問題がない点を問題視した結果、アンブシュアや吹き方を変えてしまって、せっかく身に付いていた高音を演奏する技術が上手く機能しなくなることだってあるのです。
出来る限り、現実に沿った丁寧な分析をして、対策や方法を考えるのがいいのではないでしょうか。