ひろしコンフォーコ

ツィンク奏者が物知り顔であれこれ語ろうとするものの、ちっとも上手くいかないブログ。

ネットとの出会い。僕にはそれが救いだったという話。

僕はパソコンのない家庭で育った。そういう、はいてくのろじぃな物とは全く縁がなかった。幸い小学校の頃から授業で使い方を教わったから、極々基本的な使い方は知っていたけど、僕にとってそれは単なる知識でしかなく、実際に“使う”ものではなかった。

 

ケータイ

小学生の頃、親のケータイでゲームをしていた。なんて名前のゲームだったか忘れたけど、チャット機能が付いてて、色んな人とコミュニケーションを取ることが出来た。怪しい大人の魅力をぶっ放しているお姉さんとチャットした事もあったっけ。何も起こるはずがないのに、すごくドキドキしたのを覚えている。

今思えば、それが僕とネットとの出会いだった。ネットをしているという意識はなかったのだけれど。

 

ネトゲの流行

中学生になると周りはネトゲに夢中になる友達も多くなった。ウチにはパソコンがないから出来ないけど、羨ましいなぁくらいには思ってた。

でも、僕はやった事もないのに、随分と長い間ネトゲには反対だった。一人でやる方が楽しいし、良く大人が言う「ネットで知らない人とやるなんてトンデモナイ」って言葉を鵜呑みにしていたのか、僕もそう思っていた。今からすると、なんともバカバカしい考えの持ち主だったのだなぁ、と自分を笑ってしまう。

高校生くらいになると、ドラゴンクエストや大好きなファイナルファンタジーといった超人気タイトルがネトゲになったこともあって、やってみたいという気持ちはあったけれど、パソコンもなかったし、ネトゲに対する偏見は大きかった。

 

異変

 

時は流れ、22歳の夏。

 

 

僕は、鬱になった。

 

 

 

仕事が続けられなくなり、だんだん人と話すのも難しくなった。趣味で入っていた地元の吹奏楽団の月2回の練習に行くのがやっとだった。人に会うのが嫌で休むことも少なくなかった。

僕がまともにコミュニケーションを取れたのは、その頃同棲していた彼女だけだった。それ以外の人とのコミュニケーションは出来るだけ避けた。調子が良い時は彼女以外の人と話せることもあったけれど、どこか買い物に行っても彼女にレジを任せる程だった。

買い物と言えば、僕は「何が食べたい?」と聞かれるのがストレスだった。思考能力も低下していたのか、考えるのが嫌になっていた。何を考えるのにも、やたらと時間がかかって鬱陶しかったからだ。彼女は、僕の気分を確認して、それに合わせたメニューを作るようにしてくれていた。

その配慮と心遣いには心から感謝している。他人の気分に合わせたメニューを作るなんて、やろうと思って出来るものじゃない。本当にすごいと思う。

 

パソコンとコンプレックス

僕は毎日、なんとか音楽の勉強や練習を続けようとしながらも、ほとんど何も出来ないでいた。精神的なダメージ減らす為に、仕事に復帰するのはしばらく考えないでおこうという事にしていたのだけど、何をやるにも、僕の重たくなってしまった心と身体はなかなか動いてはくれなかった。

そんな時、僕は興味本位で彼女が仕事で使っているパソコンを借りることにした。色々と知りたい事が知れると思うとワクワクしたし、やりたい事がたくさんあった。彼女も、普段は家に置きっぱなしだから問題ない、と快く貸してくれた。

僕は、音楽のことをたくさん調べた。今まで知りたかったけど知れなかったことを色々知れた。音大に通うお金もなかったから、嬉しいことだった。もちろん、それまでも勉強はしていたけど、自分で勉強しているだけでは分からなかったことがたくさんあったから。

音楽以外にも、政治のこと、文化のこと、世界の情勢のこと、何でも気になることを調べた。子供の頃から憧れていたパソコンに触れること、大学に行かなくても色んなことを勉強出来ること、僕のコンプレックスみたいなものを満たしてくれるようで嬉しかった。

 

暖かさ

ある時、ネトゲをやってみようと思い立った。理由やきっかけは忘れたけど、とにかくやってみたくなって、どんなゲームが良いか調べに調べた。その結果、「戦場のエルタ(旧Aika online)」ってのをやってみることにした。

家でずっと遊んでるとか思われたくなかったから、彼女にも許可を取った。彼女のパソコンだしダウンロードしないといけないからね。

今は亡き戦場のエルタは、いわゆるMMORPGだ。ネット上で色んな人と協力しながらクリアしていくロールプレイングゲームのこと。でも、ネットとは言え、人とあまり関わりたくなかったから始めはソロでプレイしていた。ネトゲも初めてでどうしたら良いかも分からないし、人と一緒にやるって感覚がわからなかったのもある。

でも、画面上に映る他のプレイヤー同士が楽しそうにプレイしているのを見て、次第に自分でもやってみたくなった。かなり悩んだけど、勇気を振り絞って仲間に入れて貰うことにした。

そこで出会った人は本当に素敵な人ばかりで、丁寧にゲームのこと教えてくれたり、一緒に遊んでくれたり、話し相手になってくれたり、ゲームの進行を手伝ってくれたり、本当に親切だった。何よりもふざけた雰囲気で明るくて、でも、お互い全く干渉もせず思い合っていて、居心地が良かった。あんまり楽しくて、毎日毎日一緒にプレイした。

彼らは僕の事情なんて何一つ知らなかったけれど、そんなものはどうでもいいって感じだった。それは単なるマナーとしての振る舞いだったのかもしれない。でも、僕には気遣いのように思えて嬉しかった。

ログインすれば挨拶し合って、風邪をひけば心配してくれて、ふざけ合って、いつも優しく接してくれた。そんな当たり前のようなことが、僕にはとても新鮮で、なんだか暖かに思えた。

彼らは、ネットを通して僕に人の暖かさを思い出させてくれ、人との関わり方なんて何だっていいって事を教えてくれた。

なんとも滑稽な話だけど、インターネットのおかげで、僕はもう一度人と関わることが出来たのだ。ネットが僕の居場所を作り、救いになってくれた。

 

 

そこで出会った名前も知らない人たちには、今でも心底感謝している。