ジブリ映画「耳をすませば」にツィンク? カントリーロード演奏シーンに現る謎の楽器に迫る!
スタジオジブリ作品の中でもとりわけ多くのファンに愛され続けている「耳をすませば」。
この記事の読者のみなさまの中にも「耳をすませば」の虜になっている人が少なくないだろう。
何を隠そう、筆者もその一人である。
1995年に公開され、何度も繰り返しテレビ放映されているこの美しい映画には、ある謎が隠されているのをご存知だろうか。
今回は、カントリーロードの演奏シーンの秘密に迫る!
お爺さんたちとの演奏シーン
みなさまは覚えているだろうか。
天沢聖司と月島雫がお爺さんたちと演奏するシーンを。
それは、聖司がヴァイオリンを作っているところにフンベルト・フォン・ジッキッゲン男爵(猫の人形。通称バロン)を眺めていた雫が現れ、「ヴァイオリンを弾いてくれ」とせがむところから始まる。
「その代わりお前、歌えよ!」と渋りながらもヴァイオリンを弾き始める聖司。
ヴァイオリンのイントロの最後に足を4回タップさせてカウントを入れ、それに続いて雫が「カントリーロード」を歌いだす。
2人で演奏し始めた雫と聖司だったが、1回目のサビが終わって次のメロディ「どんなさみしい時だって」という歌詞の「い」の部分から、“謎の楽器”を持ったお爺さんたちが乱入する。
って、説明細かっ!
謎の楽器の正体
謎の楽器??
お爺さんたちが持ってるやつどれも見覚えあるけど・・・
ダンディなオジサマが叩いてるのはタンバリンでしょ?
他の2人が持ってるのもチェロとギター? じゃなくてマンドリン? でしょ?
と、きっと多くの人が思っているに違いないこの楽器たち。
実はタンバリン以外は知る人ぞ知る楽器なのだ!
教養の証とされた楽器「リュート」
まず、マンドリンのような楽器。
これはリュートという楽器だ。
リュートは中世からバロック期に広く愛された楽器で、リュートを弾けることは教養の証とされていた。
今はピアノを習わせることが多いけど、なんとなくピアノが弾ける人って育ちが良く見えたりするのと同じようなものだと思ってもらえたらいい。知らんけど。
この演奏シーンでは、大して教養がある訳でもなさそうな、思いっきりサラリーマンな見た目のおじさんが弾いてる!
しかしこの楽器は、こじんまりしてて上品で本当に美しい音がする。
筆者も大好きな楽器だ。
ざっくりとした説明だが、そんな感じ。
アンサンブルの要「ヴィオラ・ダ・ガンバ」
もう一つは聖司くんのお爺さんが演奏している。
チェロとよく似た楽器だけど、よく見てほしい。
チェロとは違いなで肩だ。チェロはもっといかり肩で堂々としている。
そして、ギターやエレキベースのようにフレットがついている!
これはヴィオラ・ダ・ガンバだ。
ヴィオラ・ダ・ガンバは、主にルネサンス~バロック期に重宝された楽器。
色んな編成で用いられる引っ張りだこなモテ男だ!
バンドで言うとベースのような役割を果たす、アンサンブルの要でもある。
ちなみに、弓の持ち方や弓を動かす方向がチェロとは真逆。
だから、チェロと並んで演奏すると左利きの人の隣で食事するみたいにうざいことになる・・・
見た目は似てるけど、チェロよりも繊細で人懐っこい音色が心地いい。本当に素敵な楽器だ。
もっと変なのがいる!
このシーン、謎はこれだけではない。もっと変なのがいるのだ!
ほんの一瞬しか登場しないから見逃されることが多いけど、ヤツは間違いなくそこにいる。
まず、どのタイミングで現れるのかお教えしよう。
「どんなさみしい時だって」からのメロディからお爺さんたちが乱入してきたところまでは、さっき言った通り。
そのメロディの最後「思い出消すため」からそのままサビに突入するのだが、そこのサビではまだ姿を見せない。
問題は次だ!
もう一度サビを繰り返すのだが、その直前にタンバリンのダンディなオジサマが後ろを振り向き何やらゴソゴソしている。
オジサマがおもむろに取り出したのは、木の枝のような、木刀のような、チョコバナナのような・・・
この楽器こそツィンクである。
この見たこともない楽器。。もはや楽器にすら見えん。。
このシーンでツィンク演奏してるのはツィンク界の奇才、濱田芳通氏だ。
濱田氏はタンバリンと曲のラストに奏でられるリコーダーも兼任している。
リュートは竹内太郎氏。
ヴィオラ・ダ・ガンバは福沢宏氏。
ヴァイオリンはkaoこと植村薫氏。
歌は雫役の本名陽子氏。
なんとも豪華な大御所揃いのアンサンブルだ。
ちなみに・・・
このシーンで使われているような古い時代の楽器を古楽器って言うんだけど、実はこのシーンだけでなく劇中の色々なシーンで古楽器が使用されている。
ツィンクももう一曲あるし、リコーダーもリュートもヴィオラ・ダ・ガンバも数曲ある。
「カントリーロード」では登場しないけど、プサルテリーと呼ばれる鍵盤がない小っちゃいピアノみたいなそうじゃないみたいな楽器も、幻想的なポロロロンを聴かせてくれている。
今回は、超マイナーな楽器であるはずのツィンクたちは、実は日本人にとってめちゃめちゃ馴染みのある楽器なんだよって話でした!
しかし、誰がこの演奏シーンを考えたのか知らないけど、よくもまぁこんな変な楽器を知ってたよなぁ。
ツィンクが演奏してるパートはヴァイオリンとかぶってて聴こえにくいかもしれないけど、ツィンクも他の楽器も素敵だから演奏シーンは耳をすましてもらえたらな、と。