ツィンクの奏法の話をしよう。金管楽器共通のアンブシュアタイプの話。
たまには、ツィンク奏者らしい話題を。
ツィンクはトランペットやホルンのようなマウスピースつけて演奏する、いわゆるリップリードの楽器だ。
それゆえ、一般的な金管楽器と奏法的にもかなり共通することが多く、抱える問題や悩みも似ていることが多い。
その一つがアンブシュアだ。
アンブシュアタイプ
アンブシュアタイプという言葉を聞いたことがあるだろうか。
まだ、あまり一般的ではなく認知度も低い考え方ではあるが、非常に的確かつ客観的にアンブシュアに関して細かな観察がなされている研究なので紹介したい。
金管楽器のアンブシュアは大きく分けて3つのタイプに分類できるというのが、このアンブシュアタイプのアイディア。
多少の違いはあれど、全ての奏者が例外なく大まかなこの3つのタイプに当てはまるという。
それらは、どれが正しくどれが間違っているか、どれが優っていてどれが劣っているかという考えとは無関係だ。
それぞれの奏者が持っているアンブシュアタイプを機能させることが、奏者の演奏能力を一番引き出してくれる。
それが、このアンブシュアタイプの一つの主張なのだ。
言い換えれば、自分のアンブシュアタイプを見極めそれを機能させれば、どんなアンブシュアであったとしても上達が可能だということ。
詳しくは、以下の記事を読んでほしい。
アレクサンダーテクニークで有名なバジル・クリッツァー氏のブログだ。
ここで、氏が翻訳したアンブシュアタイプの研究者デイヴィッド・ウィルケン氏の記事を読むことが出来る。
アンブシュアの見た目と偏見
上の記事を読んで頂くと分かる通り、この考え方はこれまでの常識や教えとは異なる部分も多い。
これまでは、
マウスピースは唇の真ん中に当てるのが好ましい。
マウスピースは唇の真ん中より下にズレてはいけない。
音域によってアンブシュアは変えて(動いて)はいけない。
他にもまだまだあるだろうが、こういった考えが主流であった。
これらに共通するのはアンブシュアを見た目で判断していること。
アンブシュアを固定的な捉え方をしている。
しかし、アンブシュアタイプの研究ではアンブシュアは動いていると主張している。
高音に行くにつれて、アンブシュアとマウスピースが一体的に上方向に動くタイプと下方向に動くタイプがいることが確認されている。
デイヴィッド・ウィルケン氏の他の記事では、それが確認出来る動画も公開されているし、色々な金管奏者を観察してみると、それが間違っていないことが分かる。
どんなアンブシュアの持ち主であれアンブシュアは動いているのだ。
動くべきアンブシュアを固定させようとするとどうなるか。
高音または低音に問題を抱えたり、他の部分で無理をして補うしかなくなってしまう。
つまり、アンブシュアの機能を損なうということだ。
また、アンブシュアの見た目についてマウスピースをどこにどう当てるべきか、ということに言及していない点にも注目してほしい。
アンブシュアタイプは、超高位置、中高位置、低位置タイプに分類されている。
その名称を見て分かる通り、それぞれ見た目も異なる。
唇のかなり上の方にマウスピースをセッティングする奏者もいれば、かなり下にセッティングする奏者もいると。
もちろん、それぞれのタイプの中でも個人差はある訳だが、どのような見た目のアンブシュアであっても重要なのは見た目ではなく、自分が属しているアンブシュアタイプに沿ってアンブシュアを機能させることだ。
アンブシュアを見た目ではなく機能で捉える考え方は、アンブシュアタイプ以外の研究や教育でもすでに広まってはいるが、まだまだ根強い偏見があるのも事実。
残念ながら、それによって機能不全に陥ってしまっているケースも少なくない。
奏法について知りたければ、奏法について研究している人に聞くのが一番である。
プロの演奏家に聞くのもいいが、その場合はこちらもある程度の知識を持っているべきである。
演奏家は演奏のプロなのであって、奏法や教育の専門家ではないのだから。
アンブシュアタイプの名称について
先ほども紹介した通り、アンブシュアタイプは超高位置、中高位置、低位置タイプと、マウスピースを当てる場所の傾向が名称に表されている。
しかし、これには注意が必要だ。
この分類方法は、決して見た目によるものではなく機能によって分類されているからだ。
例えば、ちょうど唇の真ん中辺りにマウスピースを当てて、音域が上がるにつれてアンブシュアとマウスピースが下方向に動いている場合、中高位置か低位置のアンブシュアタイプだと考えられるが、見た目で分類しようとしたならば、これ以上の分析は不可能だ。
では、どうするか。
息の方向で判断可能だ。
この場合、息が下方向に流れていれば中高位置タイプ。
息が上方向に流れていれば低位置タイプと分類できる。
アンブシュアタイプの名称は、あくまでも見た目の特徴を表したものであって、見た目で分類している訳ではないということ。
何度もしつこいようだが、アンブシュアで重要なのは見た目ではなく機能だ。
息の方向については、透明マウスピースを用いると観察しやすいのでオススメします。
今後は奏法については書いていこうと思うのでお楽しみに!
気が向いた時だけだけど・・・